20世紀の後半、急激に増えたディーゼル車の排気ガスが大きな社会問題になり、その後ディーゼル車を規制する動きがあった。それに伴い、ディーゼル車は徐々に姿を消していった。
しかし巻き返しを図るべく、ディーゼルエンジンの改良が始まったのだ。そして誕生したのが「クリーンディーゼル車」というわけである。
ではそもそもディーゼル車とはどんな車なのだろうか。本文を読むにあたってまずそのポイントをまとめておこう。
クリーンディーゼル車 | |||
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・ディーゼルエンジンとは軽油を使うエンジン ・クリーンディーゼルは粒子状物質、窒素酸化物の排出量の少ないディーゼルエンジンとして開発された |
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メリット | デメリット | ||
1.燃費の良さ(ガソリン車と比較) | 1.車両の価格(費用)が高い | ||
2.走行距離に耐えうる耐久性 | 2.ディーゼルエンジンのために車両が重い | ||
3.環境性能 | 3.点検・整備に専門知識がいる | ||
4.燃料が良い・維持費が安い | 4.アドブルー(尿素水)が必要な車種もある | ||
5.高トルクが力強い加速を生み出す | 5.専用のエンジンオイルの値段が高い | ||
6.クリーンディーゼル補助金が出る | 6.DPFを再生(クリーニング)する必要がある(排ガス対策) | ||
7.ディーゼルエンジン特有の騒音がうるさい |
この記事ではクリーンディーゼル車が誕生した背景やそのエンジンの仕組みをまず解説する。
そして、クリーンディーゼル車とディーゼル車との違い、クリーンディーゼル車のメリット・デメリットも詳しくご紹介しよう。最後に国産クリーンディーゼル車も挙げているので、興味のある方はぜひ参考にしていただきたい。
クリーンディーゼル車とは?仕組みと性能を知る
クリーンディーゼル車とは、2009年から施行されている通称「ポスト新長期規制」という排気ガス規制の強化に関する基準を満たした窒素酸化物や粒子状物質の排出量が少ないディーゼル車のことである。
そもそもディーゼル車はガソリン車よりも燃費性能が高く、二酸化炭素の排出量も少ないという良い面がある(ただし、不完全燃焼が起こりやすく、大気汚染物質の排出量は多い)。
低回転でも高いトルクが得られるため、パワフルな走りが楽しめるとあってディーゼル車愛好家もかなり多い。
しかし環境汚染が社会問題となる中で、ディーゼルエンジンの排ガスも規制されるようになった。それに伴い規制基準を満たすために、ディーゼルエンジンの再開発が行われるようになったのである。
クリーンディーゼルエンジンの大きな特徴は、排出されるガスの浄化システムにある。
「尿素SCRシステム」は、アンモニアと窒素酸化物の化学反応を利用して、窒素酸化物を無害化するものである。こちらは主に大型車に用いられている。
また「窒素酸化物吸蔵還元触媒」というシステムは主に小型車に用いられ、触媒による化学変化によって窒素酸化物を無害な窒素や酸素に還元し、有害物質を低減させている。
このような技術革新により、ディーゼル車の次世代カーであるクリーンディーゼル車が誕生したのである。
“ガソリン車”と”ディーゼル車”の根本的な違いを知り理解を深める
ディーゼルエンジンの仕組みを考えるにあたり、まずはガソリンエンジンの仕組みについて見てみよう。
ガソリンエンジンの仕組み
ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも、エンジンがかかるまでの工程は同じである。吸気、圧縮、膨張、排気という工程を経て、車が始動する。
ガソリンエンジンの場合、吸気工程にて、まず吸気弁が開き、気化ガソリンと空気の混合気が燃焼室に入ってきてピストンが下がる。次に圧縮工程でピストンが押し上げられることによって、ガソリンと空気の混合気が圧縮される。
次にその圧縮された混合気に点火プラグで電気的に点火を行う。そうすると今度はピストンが押し下げられるという膨張工程を経て、燃焼後のガスが排気されるという仕組みになっている。
ディーゼルエンジンの仕組み
一方ディーゼルエンジンの場合、吸気工程で入ってくる気体は、空気のみである。そしてピストンが押し上げられることで空気が圧縮するが、この時圧縮された空気はなんと600℃もの高温になるという。
そこに燃料が直接噴射され、自然着火する。その時の力がピストンを押し下げ、その後燃焼後のガスが排気されるという仕組みになっている。ちなみにディーゼルエンジンは軽油を燃料としている。
このようにガソリンエンジンとディーゼルエンジンには基本的な構造の違いはないが、具体的な仕組みには大きな違いがある。
ディーゼル車は仕組み上、熱効率に優れており、燃費が良くなる。
ただし、熱効率が良い分、空気が過剰になってしまうと窒素酸化物が発生してしまい、反対に空気が不足すれば燃え残った燃料が煤になるなど、大気汚染物質の排出が問題だった。
そこでその問題を改善するためにディーゼルエンジンの再開発が行われた。先述の通り、触媒によって汚染物質を低減するなどの取り組みだ。
マツダのSKYACTIVE-Dは世界一の低圧縮ディーゼルエンジンを実現
マツダのSKYACTIVE-D(スカイアクティブ ディー)という言葉を最近よく耳にするようになっただろう。実はこれ、ディーゼル式のエンジンのことで、世界の常識を覆して作られたものである。
先程説明したように、ディーゼルエンジンは圧縮工程で、空気を高圧縮し軽油を直接噴射して自然着火させる。
ディーゼルエンジンは熱効率が良い反面、大気汚染物質の排出が多くなりやすい。そのほか、高い圧力に耐えられるようにピストンやシリンダーなどの部品の強度を高める必要があり、部品の重量が大きくなるというデメリットもある。
マツダはそのようなディーゼルエンジンのマイナス面を改善させた技術を開発。空気と燃料の混合気を低圧縮で燃焼させる技術を実用化した。低圧縮比が14.0で、世界一低圧縮のクリーンディーゼルエンジンとなったのである。
これにより、燃焼の際に出る窒素酸化物や二酸化炭素などの排気ガスを少なくすることに成功。高価なNOx後処理なしで日欧の排出ガス規制をクリアしている。従来比約20%の燃費改善、さらにはエンジンの大幅な軽量化も実現している。
『クリーンディーゼル車』と『ディーゼル車』の違い
ディーゼル車というと騒音が大きく、黒煙を上げて走るというイメージを持つ方も多いだろう。クリーンディーゼル車とは、PMと言われる粒子状物質や窒素酸化物(NOx)などの有害な排気ガスの排出量を少なくした車のことである。
ディーゼル車の難点と言われた環境面での基準を満たすためにクリーンディーゼル車では「コモンレールシステム」という技術が採用されている。
コモンレールシステムとは燃料噴射システムのことで、インクジェットプリンタの原理を用い燃焼効率を上げることで、燃焼時の有害物質低減が実現した。
また排気ガスの処理能力も向上させた。DPFと呼ばれる黒煙除去フィルターも開発され、今だに進化を続けているのである。
クリーンディーゼルが生まれた理由
ディーゼル車の規制が厳しくなったのは、ディーゼル車の出す排気ガスが環境に良くないという指摘があったからである。特に排気ガスに含まれる黒煙やPM、窒素酸化物が酸性雨の原因とされた。
もちろんこれらの有害物質はガソリン車も排出するし、工場の煙にも含まれているのだが、トラックやバスなど大型車に多く使用されているディーゼルエンジンにその矛先が向けられ、ディーゼル車を締め出す動きが見られるようになった。
実際に東京都が1999年から「ディーゼル車NO作戦」なるものを実施し、環境基準を満たせないディーゼル車の走行は都市部を中心に規制されるようになったのだ。
また旧式のディーゼル車は車検を取得できなくなり、事実上ディーゼル車は姿を消すこととなった。しかしここから巻き返しが始まる。
ディーゼルエンジンの改良が始まり、エンジンからの排気ガスを減らすこと、そして排気ガスに含まれる有害物質を取り除くことの両方に関する技術革新が行われ、見事環境基準をクリアしたクリーンディーゼルエンジンが誕生したのである。
クリーンディーゼル車の『6つのメリット』
今注目されている次世代のエコカー、クリーンディーゼル車であるが、この車にはどのようなメリットがあるのだろうか。
今も昔も大型のバスやトラックはディーゼルエンジンを搭載していることがほとんどだが、それはディーゼルエンジンには低回転でも強いトルクが得られるという特徴があるからである。
ディーゼル車ならではのパワフルな走行を好む人も多い。では、クリーンディーゼル車に乗る利点を6つ挙げてみよう。
1.クリーンディーゼル車の燃費の良さ(ガソリン車と比較)
ディーゼル車の最大の利点はやはり、燃費の良さだろう。
ディーゼルエンジンは、シリンダー内の空気を圧縮することで高温にし、燃料の軽油を噴射して爆発燃焼させることで発生するエネルギーを動力としている。
そのためガソリンエンジンよりも発生するエネルギーが大きく、より少ない燃料でエンジンを効率よく回すことができるため、燃費が良くなるのだ。
同じモデルの車でも、ガソリン車と比べるとディーゼル車は格段に燃費性能が高い。
2.クリーンディーゼル車の走行距離に耐えうる耐久性
ディーゼルエンジンの特徴として、頑丈に作られており耐久性が高いということが挙げられる。
そのため、エンジンの寿命もガソリンエンジンの2倍とも言われており、平たく言えばディーゼル車はガソリン車の2倍走行できるという計算になる。
もちろんそんな単純なものではないのだが、エンジンが強くて調子が良ければ、長期間乗ることが可能になる。
クリーンディーゼル車はヨーロッパでとても普及しているのだが、ディーゼル車が選ばれる理由の1つがこの耐久性の高さなのである。
メンテナンスをきちんと行っていけば、エンジンの寿命も伸ばし、たくさんの距離を走ることが可能になるだろう。
3.クリーンディーゼル車の環境性能
昔の黒煙を出しながら走るというイメージから、なにかと環境に悪いと目の敵にされてきたディーゼル車であるが、実は環境性能に優れている点もある。
それはガソリン車に比べて、二酸化炭素の排出量が少ないという点である。
またディーゼル車が燃料とする軽油は、精製の過程で排出する二酸化炭素がガソリンの約半分で済むとも言われている。
それでもし今後、クリーンディーゼル車がもっと普及してガソリン車のシェアを奪うことができたとすれば、走行時と燃料精製時の両方で二酸化炭素の排出量を減らすことができると考えられているのだ。
4.クリーンディーゼル車の燃料が良い・維持費が安い
ディーゼル車が燃料としているのは、ご存知の通り軽油である。軽油はガソリンと比べて安価なため、燃料費が安いというメリットもある。
ここに満タンで40リッター入る車があったとしよう。125円のレギュラーガソリンを満タンにした場合、合計金額は5,000円だ。
しかし100円の軽油で満タンにした場合は、合計金額が4,000円となり、1回の給油で既に1,000円の差額が生じてくることになる。
5.クリーンディーゼル車は高トルクが力強い加速を生み出す
トルクとは、車体を加速させる力のことである。トルクが大きければ大きいほど、重量のある車を加速させることができる。
ディーゼルエンジンは低回転から高いトルクを生じさせることができるため、軽く踏むだけでも力強い加速感を味わうことができるというメリットがあるのだ。
ディーゼルエンジンの真価が特に感じられるのは、混み気味でも車の流れが早いような場面である。
一定の車間を楽にキープすることができ、軽くアクセルを踏むだけで力強くしかも穏やかに加速できるため、ストレスの少ない走行が可能になるのである。
6.クリーンディーゼル車はクリーンディーゼル補助金が出る
クリーンディーゼル車購入時には、自動車重量税や自動車取得税などが減税されるという「エコカー減税」という制度に加えて、「CEV補助金」という国から補助金が交付される制度も適用される。
2023年度以降、クリーンディーゼル車のエコカー減税終了が決まっている(詳しくは「財務省『自動車重量税のエコカー減税の見直し』」)。
CEVとはクリーンエネルギー自動車のことで、クリーンディーゼル車(CDV)のほかには、
- 電気自動車(EV)
- プラグインハイブリッド自動車(PHV)
- 燃料電池自動車(FCV)
- 原動機付自転車・側車付二輪自動車
がCEV補助金の対象になっている。
この補助金の対象になるディーゼル車は、平成22年に出された「ポスト新長期規制」という排気ガスに関する基準をクリアしたクリーンディーゼル車である。
これは世界一厳しいとも言われている基準で、ディーゼル車であってもガソリン車と同程度の規制値が設けられている。さらに次世代自動車振興センターで審査・承認された車両という条件も満たす必要がある。
補助金の金額については車種ごとで異なるが、クリーンディーゼル車の場合、上限が十五万円となっている(2021年7月1日現在)。
この補助金を実施しているのは次世代自動車振興センターだが、補助金制度は予算が定まっているため、なくなり次第終了になる。CEV補助金の申請は早い者勝ちといっていい。
【最新年度版】クリーンディーゼル車の補助金の金額はいくら?申請手順は?
クリーンディーゼル車の補助金は、政府が決めた予算の中から決定されている。それによっていつまで補助金が受け取れるのか、そして金額が決定する。
また、個別に申請する方法もあるため、該当している方は注意してほしい。詳しくは「知っておきたい!EV車・PHV車・クリーンディーゼル車の補助金制度」で解説している。
クリーンディーゼル車の『7つのデメリット』
前項で見てきたように、クリーンディーゼル車にはたくさんのメリットがあるが、一方でデメリットがあるのも事実である。
特に購入時の支出が大きい上に、メンテナンスのための費用が意外とかさむのだ。ディーゼル車の根強いファンも多いのだが、まだまだ課題として残されている問題も多く、これからの技術向上に期待したいところである。
ではクリーンディーゼル車のデメリットを7つ順番に見ていこう。
1.クリーンディーゼル車は車両の価格(費用)が高い
やはり一番に挙げられるデメリットは、車両価格が高いということだろう。
環境に配慮した世界一厳しい基準とも言われている「ポスト新長期規制」を満たすためには、相当な技術革新が必要であった。
そのために開発された技術を搭載したクリーンディーゼル車は、同じモデルのガソリン車と比較すると大体20万円~40万円ほど高値となるケースが多いのだ。
例えば、マツダの「MAZDA3」にはクリーンディーゼル、ハイブリッド、ガソリンの3タイプあるが、
- ガソリン車:約222万円~
- ハイブリッド:約279万円~
- クリーンディーゼル車:約279万円~
とハイブリッド車と並んで、ガソリン車よりも高額な値になっている。
2.クリーンディーゼル車はディーゼルエンジンのために車両が重い
エンジンが頑丈に作られているということは、それだけ重量があるということにもなる。
普通ガソリンエンジンは圧縮比が11以下であるが、ディーゼルエンジンの場合は着火しやすくするため圧縮比が20以上とかなり圧縮比が高い構造となっている。
その高圧縮に耐えられる頑丈なエンジンにするためには、それぞれのパーツも頑丈になり、その分重量がかさむことになるのである。
3.クリーンディーゼル車は点検・整備に専門知識がいる
クリーンディーゼルエンジンは複雑な機構を持っているため、点検や整備には専門知識を持った整備士が必要となる。
特にコモンレールというディーゼル燃料の燃焼をコンピューターにより電子制御するシステムが開発されたことで、長年ディーゼルエンジンの課題であった汚染物質排出量の低減を実現させた。
しかしこのコモンレールディーゼルを扱える整備士がまだまだ少ないため、不具合があっても町工場などでは整備できないと言われてしまうケースもある。
そのためメンテナンスのたびに、このディーゼルエンジンを扱える整備士のところに車を持っていく必要がある。
4.クリーンディーゼル車はアドブルー(尿素水)が必要な車種もある
アドブルーというのは尿素水のことである。
これは何のために使われるかというと、酸性雨の原因とされる窒素酸化物にアンモニア水を噴射して、化学反応を起こすことにより窒素酸化物を無害化する浄化システムに必要とされる。
この尿素SCRシステムを搭載しているメーカー、例えばメルセデスやトヨタなどの車両には、このアドブルーが必須となるのだ。アドブルーは定期的な補充が必要で、足りなくなると排気ガスに問題が生じる。
アドブルーは規格品なので、定期的な補充には意外とコストがかかってしまう。
5.クリーンディーゼル車は専用のエンジンオイルの値段が高い
メンテナンスの費用でもう一つ見過ごせないのが、エンジンオイルの交換である。最新のクリーンディーゼルエンジン専用のオイルは少々お高めだ。純正オイルフィルターだけでも2,000円はする。
クリーンディーゼルエンジンはオイル指定という場合も多く、純正の物だとやはりコストがかさむ。5,000キロごとにオイル交換、10,000キロごとにフィルター交換と考えていくと、けっこうな費用になる。
6.クリーンディーゼル車はDPFを再生(クリーニング)する必要がある(排ガス対策)
ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるPMつまり粒子状物質を除去するために有効なシステムが、DPFとよばれるディーゼル微粒子補修フィルターである。
基本的には自動でキャッチしたススを燃焼させてクリーニングする仕組みとなっているが、DPFランプが点灯すると、エンジンの回転を上げて燃焼を促す必要があるのだ。
それで通勤距離が短かったり、ちょい乗りしかしなかったりするユーザーにとっては、このDPF再生がタイミングよく行なわれず、燃費に影響することもあるだろう。
7.クリーンディーゼル車はディーゼルエンジン特有の騒音がうるさい
ディーゼルエンジン特有の騒音がまだまだうるさいということもデメリットの1つである。防音性能がしっかりしている車内では特段気にならないという人もいるかもしれないが、車外ではちょっと気になるかもしれない。
ディーゼル車は車体も重く、パーツも頑丈にできているため、ガソリン車よりも騒音が大きくなりやすい。また音量というよりは、独特の「カラカラ」音が耳につくという意見もある。
クリーンディーゼル車の国産代表車種一覧
ディーゼル車の規制によって誕生したクリーンディーゼル車。現在日本国内で、クリーンディーゼル車と名乗れるのは、「ポスト新長期規制」をクリアした車だけである。
ではここで、日本国内で販売されている代表的なクリーンディーゼル車をご紹介しよう。
トヨタ
トヨタ自動車から販売されているクリーンディーゼル車はクロスカントリーの「ランドクルーザープラド」、ミニバンの「グランエース」、ピックアップトラックの「ハイラックス」、キャブオーバーバンの「ハイエースバン」などがある。ここでは紹介していないが、トラックの「ダイナ カーゴ」もディーゼル車だ。
ランドクルーザープラド
トヨタの「ランドクルーザープラド」は、航続距離ランキングでも上位に入る車である。
航続距離というのは、燃料を満タンにした状態で走れる最大距離のことで、ランドクルーザープラドは航続距離が1020.6㎞となっている。一度の給油でこれだけの距離が走れるというのは非常に頼もしい。
2.8Lのディーゼルエンジンを搭載し、本格的なSUV車にふさわしく、最高出力は130kW、最大トルクは450N・mというパワフルな走行性能を有している。
コモンレールシステムを採用し、高精度な燃料直接噴射を行なうことで、燃焼時の有害な排気ガスの低減化を実現させた。さらに排出ガス浄化装置や尿素SCRシステムによって、「ポスト新長期規制」にも適合している。
さらにグリーン化特例により、新規登録翌年度の自動車税もなんと75%減税されるのだ。
グランエース
2019年に販売が開始されたハイエースをベースとしたハイグレードワゴンである「グランエース」。
全長5.3m 、全幅1.97m、全高1.99mとトヨタの国内向けミニバンで最も大きなサイズだったアルファードやヴェルファイアよりもさらに大きな車種となる。日本車における全長5m超のフルサイズミニバンは2004年販売終了のホンダ・ラグレイト以来となる。
グレードはディーゼル車のみで、エントリーモデルの「G(8人乗り)」と「Premium(6人乗り)」とがある。エンジンは2.8Lのクリーンディーゼルエンジンを搭載。尿素SCRシステム、DPRの採用によって窒素酸化物の大幅低減を実現。
エンジンルームと室内を隔てるダッシュパネルに積層構造の複合鋼板を用い、また吸遮音材、制振材を適切に配置することで、静粛性能が強化されている。
ハイラックス
1968年から発売されている「ハイラックス」。現在日本で唯一新車販売されているピックアップトラックだ。現行モデルは8代目(2015年~)で、ディーゼルエンジン車のみの設定だ。
全長5,335mm、全幅1,855mmで、登録ナンバーは1ナンバー(普通貨物車)となる。エンジンは国内初導入の直列4気筒2.4Lディーゼルターボ2GD-FTV型を搭載。
グレードはエントリーモデルである「X」、「Z」、「Z”GR SPORT”」を設定。デッキスペースは最大500㎏の積載可能。ボディには防錆鋼板、サビや腐食に強い素材を採用し、風雨に強く、ラフな使い方にも適応している。
ハイエースバン
トヨタのハイエースは1967年に登場、現行モデルは5代目で2004年からの発売になる。ディーゼル車のグレードは「DX(2WD/2800ディーゼル・2/5人乗り)」「スーパーGL(2WD/2800ディーゼル・標準ボディ・標準ルーフ)」が設定されている。
ハイエースといえば、荷室の広さ。運転席からバックドアまでの荷室の長さは3000㎜、荷室高は1320㎜、荷室幅は1520㎜(スーパーGLの場合)。荷室効率の最大化がなされ、1tキャブバンクラス最大級の荷室床面長が実現されている。また、開閉耐久性や雨漏れ対策などをすべて計算し尽くして部品をミリ単位で設計。
安全性能についても、車両や歩行者を検知する「プリクラッシュセーフティ」、車両を上から見たような映像をナビ画面に表示する「パノラミックビューモニター」、パーキングをサポートしてくれる「インテリジェントクリアランスソナー」など大型車のドライブに欲しい性能が充実している。
マツダ
マツダのSKYACTIVE-D(スカイアクティブ ディー)は有名だ。SKYACTIVE-Dとは従来のディーゼルエンジンのマイナス面を改善させたマツダの新世代クリーンディーゼルエンジンのことだ。
「MAZDA ROADSTER」のようなスポーツモデル、「MAZDA MX-30」のような電気自動車、軽自動車などの車種を除いて、多くの車種にSKYACTIVE-Dが設定されている。
CX-3 XD
マツダの「CX-3 XD」は発売当初から、その高いデザイン性が話題となっていた。内装も高級感があふれており、シックで落ち着いたデザインは評価が高い。
外装もマツダ特有のデザインでありながら、タイヤ周りなどに樹脂フェンダーが使われているあたりにSUV車らしさが感じられる。
デミオのSUV版とも言われており、車内空間はデミオとほぼ同じである。そのため後部座席がやや狭く、大人4人での長距離ドライブは少々手狭に感じるかもしれない。
しかし、クリーンディーゼル車ならではのトルクフルな走りや、燃費性能の高さ、そして洗練されたデザインが人気を集めている。
SKYACTIV-D1.8エンジンを搭載しており、燃費はWLTCモード燃費モードで20.0㎞/Lとハイブリッドカー並みの実燃費を誇る。
CX-5 XD
クリーンディーゼル車の火付け役となったのがこの「CX-5XD」である。SKYACTIV-D2.2エンジンを初めて搭載した車であり、窒素酸化物後処理装置がなくDPFのみで見事「ポスト新長期規制」をクリアしている。
燃費はWLTCモード燃費17.4㎞/L。車体の全長や高さが5ナンバー枠でありながら、全幅が1845mm、排気量が2.188ccということで3ナンバー登録となる。
大きなエンジンに対してボディが少しコンパクトなのは、グローバルカーや高級車によくある組み合わせと言える。
エンジンは車体の前方にあり前輪駆動のFF方式が採用されている。FF方式だとエンジンルーム内に、エンジンだけでなくミッションやデフなどが収納できるため、コンパクトで軽量、室内も広くしやすいといった利点がある。
騒音もほとんどなく、エンジンの回転も非常に滑らかで、加速もスムーズなので運転はかなり快適であることを期待できる。変則もスムーズなので長距離も問題なさそうだ。
CX-5XDのクリーンディーゼルエンジンは高速走行時に際立った良さを感じられる。
車体価格は「XD Smart Edition」で約299万円~322万円。
CX-8 XD
大型クロスオーバーSUVの「CX-8」。ガソリン車、ディーゼル車の2タイプが用意されており、グレードは「XD」、特別仕様車「XD Smart Edition」、「XD Proactive」、特別仕様車「XD Black Tone Edition」、「XD L Package」、「XD Exclusive Mode」。
エンジンはSKYACTIV-D2.2を搭載。XDの燃費性能はWLTCモードで15.8km/L。全長4900mm、全幅1840mm、全高1730mmで広々とした快適な3列シートだ。
CX-8の特徴は、その美しいデザイン性にある。SUVといえばアクティブで無骨なイメージが強いが、大人の好む上品さが追求されている。もちろん、荷物がしっかり積めるラゲッジルーム、総重量750㎏以下のトレーラーなどを牽引できるトーイング性能など、実用性のパフォーマンスも高い。
XDの場合、新車価格は2WDで3,377,000円、4WDで3,613,500円となっている。
CX-30 XD
2019年、マツダの新世代商品第2弾となる新型SUVとして「CX-30」が登場。ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの3タイプが用意されている。
クリーンディーゼルエンジンのSKYACTIV-D 1.8が搭載。「XD Proactive」のWLTCモード燃費は19.5km/L。
「CX-30」の特徴は運転しやすいサイズ感だ。
もともとマツダのSUVモデルは先に紹介したCX-3、CX-5、CX-8がある。CX-3だと後席が少し狭いという意見や、CX-5は大きくて運転馴れしていないドライバーには怖さがあるという声があった。それでCX-3とCX-5の中間的な存在としてCX-30が開発された。
XD Proactiveの場合、新車価格が2WDで2,887,500円、4WDで3,124,000円となっている。
マツダ2 XD
マツダ2はもともと「デミオ」として販売されていたコンパクトカーだ。2019年から「MAZDA2」に改称された。
ガソリンとディーゼルの2モデルが用意されている。クリーンディーゼルエンジンであるSKYACTIV-D 1.5が搭載。XDのWLTCモードは21.6km/Lと燃費が良い。
洗練されたフロントフェイスやモダンな水平基調の造形で、シンプルでありながら上品なデザインが特徴だ。運転のしやすさも良く、人とクルマが一体となる感覚を追求した「G-ベクタリング コントロール」が搭載。これにより、ドライバーのハンドル操作に応じてスムーズで効率的な車両挙動を実現することができる。
XDの場合、新車価格が2WDで1,903,000円、4WDで2,123,000円となっている。
マツダ3 XD
マツダ3はCセグメントの乗用車で、もともと2003年から国内では「アクセラ」という名称で販売されていたが、2019年にMazda3と名称が変更された。
ボディタイプは4ドアセダンの「SEDAN」と5ドアスポーツの「FASTBACK」と2モデルがある。それぞれハイブリッド、ガソリン、ディーゼルエンジンの3タイプが設定。
「SEDAN」「FASTBACK」ともにエンジンはSKYACTIV-D 1.8。「SEDAN」のWLTCモード燃費は20.0km/L、「FASTBACK」のWLTCモード燃費は19.8km/Lとなっている。
新車価格についてはSEDANのXD Proactiveは2,790,741円、同じくFASTBACKのXD Proactiveは2,790,741円。
マツダ6 XD
マツダ6はミドルサイズのセダン、ステーションワゴンで、もともと国内では「アテンザ」という名称で販売されていたが、2019年にMazda6と名称が変更された。
ボディタイプは4ドアセダンの「SEDAN」と5ドアステーションワゴンの「WAGON」と2モデルがある。それぞれガソリン、ディーゼルエンジンの2タイプが設定。
「SEDAN」「WAGON」ともにエンジンはSKYACTIV-D 2.2。WLTCモード燃費もどちらも17.8km/Lとなっている。
新車価格については「SEDAN」のXDの場合、2WDで3,311,000円、4WDで3,553,000円。同じく「WAGON」のXDの場合も2WDで3,311,000円、4WDで3,553,000円。
三菱
三菱では2種類の車がある。どちらも三菱の代表的な車である「デリカD:5」と「パジェロ」だ。どちらもガソリン車はなく、クリーンディーゼル車の設定のみとなっている。
パジェロの新車販売は2021年(令和3年)で終了となった。
デリカD:5
ミニバンタイプでは初のクリーンディーゼル車が、この「デリカD:5」である。クリーンディーゼ搭載車も、ミニバンの優しさに加えてSUVの力強さをあわせ持つという特徴がしっかり見られる。
どんな路面の状況、走行状況かによって前輪後輪の駆動力配分を最適化する電子制御4WDを持つ。
アイドリングから走り出し、そして低速域ではディーゼル車特有の振動や騒音を感じるものの、ある程度のスピードに達するとほとんど気にならず、トルク感のある非常に心地よい走りをしてくれる。
時速80㎞なら1600回転、時速100だとしても1800回転ほど回っているため、エンジン音が抑えられ、振動も気にならなくなるのだ。アクセルを踏み込んだ時にクリーンディーゼル車のレスポンスが物足りないという意見もあるようだが、このデリカD:5に関しては心配いらない。古典的なディーゼル車を感じさせるレスポンスだ。
抜群の走破性に加えてクリーンディーゼル車の持つトルクや燃費に魅力を感じる人は多いはずだ。デリカD:5の航続距離は832㎞、燃費はWLTCモードで12.6㎞/Lとなっている。価格は約391万円~448万円となっている。
パジェロ
クリーンディーゼルエンジンを搭載したパジェロは3.2Lのエンジンの吸気系、燃焼室形状が改善されNOx排出量が大きく低減されている。
クリーン化が施されているとともに、ターボチャージャーが効率化されたため出力やトルクの向上がもたらされた。最高出力は20ps増し190psとなり、最大トルクは7.2kgm増し45kgmにもなっている。
街乗りであれば軽くアクセルを踏むだけで十分すぎるくらいの走りをしてくれることだろう。少し強めに踏み込めば、ターボチャージャーの音と共に、猛烈なトルクを感じることができる。
さらに新型5段AT採用により燃費は従来のエンジン搭載車よりも0.7㎞/L伸びている。燃費はJC08モードで10.0~10.4㎞/Lだ。
つまり環境基準をクリアしつつ高燃費を実現、なおかつパジェロ史上最大のトルクを出せるということだ。
パジェロはディーゼル車としての主張をしっかり残しているためアイドリング時には少し音が鳴るが、エキゾーストパイプ付近の臭いは全くといっていいほどない。
「クリーンディーゼル」を名乗るにふさわしく黒い煙は出ない。ちなみにパジェロの航続距離は915.2㎞。価格は375万円~493万円となっている。
残念なことに2021年に生産が終了した。中古車の価格相場をチェックしてみると、平均価格は185万~190万円となっている。
将来の主流になるかもしれないクリーンディーゼル車
次世代のエコカーとしての呼び声も高いクリーンディーゼル車。ヨーロッパの主要国では約半数がディーゼル車というほど普及しているが、日本ではまだまだこれからだろう。
かつてディーゼルエンジンは環境に悪いと言われ、徐々に姿を消していった時期があった。ディーゼル車の排出するガスが酸性雨の原因の1つとされ、車検が取れなくなったり、走行が規制されたりすることもあったが、それはもう過去の話である。
ディーゼル車はクリーンディーゼルエンジンを搭載して見事に復活を遂げたのだ。
排気ガス中の窒素酸化物や粒子状物質をいかにクリーンなものにできるかが復活のカギを握る要素であったが、ディーゼルエンジンの改良によって、今ではガソリン車並みの基準値を実現できるまでになった。
現在日本国内でクリーンディーゼル車として認められているのは、「ポスト新長期規制」という厳しい基準をクリアできた車のみで、国産車ではまだ数が限られている。
しかしパワフルな走りができるディーゼル車は愛好家も多い。さらにディーゼル車の魅力は何といっても、その燃費の良さにある。
まとめ
エコカーと聞くと、ハイブリッドカーや電気自動車を想像する方も多いだろう。しかし将来日本国内で主流になっていくのではないかと考えられているのが、実はクリーンディーゼル車なのである。
ディーゼル車と聞くと黒煙を出して走るイメージが強いが、それはもう昔の話。
一時期はディーゼル車の排気ガスが酸性雨の原因の1つと言われ、東京都では「ディーゼル車NO運動」が行われるなど、ディーゼル車を締め出す動きが活発化した。それに伴いディーゼル車は徐々に姿を消していったのである。
しかしここからディーゼル車の巻き返しが始まる。ディーゼルエンジンの改良によって様々な技術革新が行われ、排気ガスのクリーン化が実現し、それによって誕生したのがクリーンディーゼル車というわけだ。
クリーンディーゼル車には多くのメリットがある。何といっても燃費の良さは筆頭に挙げられるだろう。軽油を燃料としているため燃料費が安く、ランニングコストの軽減も期待できる。
またガソリン車に比べて二酸化炭素の排出量も少なく環境に優しい車なのだ。さらにディーゼル車はトルクが高いので、軽く踏むだけでも力強く加速できるという魅力もある。
一方で、補助金が出るもののまだまだ車体価格も高く、維持費にも意外とコストがかかるといった課題もある。しかし環境性能に優れたクリーンディーゼル車は確実に次世代を担う車となっていくことだろう。