中古車の買取業者は利益を出すためになるべく仕入れ価格を抑えようとする。実際に査定に出してみると、あまりに安い金額だと「はたしてこの業者に任せた自分の選択は正しかったのだろうか」と疑問を感じることもある。
そういう人に認識しておいてもらいたいのが、現在の中古車買取業者は中古車の仕入れ価格を抑える以外に利益を上げる方法がないということである。いかに仕入れ価格を抑えるかが、すべての中古車買取業者に共通する目的なのだ。
買取額が安くて業者の利益が多い車の条件 | |||
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1.不人気車 | |||
2.事故車・修復歴車 | |||
3.冠水車、災害車 | |||
4.走行距離不明(メーター改ざん歴がある車) | |||
5.過走行車(1年15,000km以上) | |||
6.年式が古い(モデルチェンジなども含む) | |||
7.キズやヘコミが多い | |||
8.内装が汚い、焦げ跡がある、臭いがある(喫煙車) | |||
9.子供がいる形跡がある |
こうした車は売り手も、安くてもいいから手放したいと考えるため、業者側も仕入れ価格を抑えやすい。
売り手はこの事情を心得ておかないと、必要以上に安く買い叩かれてしまう危険性がある。適正な価格で売却するには査定額の相場をリサーチしておくことが肝心だ。
販売価格-仕入価格=中古車販売店の利益
中古車販売店に展示されている車の値段を見ると、「この車がこの値段なら、自分の車も高く売れるのではないか」と希望を感じることがある。しかし、実際に査定してもらうと、予想外に低い買取金額を提示されることがある。
同じ車種で条件にもそう違いがないのに、なぜここまで安いのかと疑問に思うこともあるだろう。不当に買い叩かれているのではないかと思うことさえあるかもしれない。
そんな人に知っておいてもらいのが、店頭に展示されている中古車の販売価格とその車の仕入れ価格には大きな違いがあるということだ。
この計算式は全国どこの中古車買取業者に行っても共通している。中古車を仕入れ、それを仕入れ価格以上で売ることで業者は利益を得ている。つまり、販売価格から業者の利益分を引いた金額が仕入れ価格なのである。
それだけではない。中古車販売には作業費、人件費、管理費、広告費などさまざまなコストがかかる。さらには、中古車の販売価格には税金や保険などの費用も含まれているのである。
利益以外にこうしたコストも必要なため、中古車の販売価格は仕入れ価格と大きく違うのだ。
仕入価格が安くなる車の条件(買取業者が得する車)
このように、販売されているすべての中古車は仕入れ価格より相当な金額を上乗せされているわけだが、そのなかでも、特に仕入れ価格が安くなりがちな車の条件がある。
誰もが欲しがるような車は、たとえ中古車でも仕入れ価格を抑えるには限界がある。そもそも需要の高い車なら、少々仕入れ価格を上げてもそれなりの販売価格が付けられるものだ。
仕入れ価格が安くなる車とは、通常では買い手が付かないような車のことだ。それを極限まで安い値段で買い取って、それに手を加えて通常価格で販売することで業者は大きな利益を出すのである。
では、その通常では買い手が付かないような車とはどんな車なのかを以下に詳しく見ていこう。具体的には9つある。
1.不人気車
人気車は仕入れたそばから売れるので、業者は在庫を抱える心配がない。しかし、人気車ほど仕入れにコストがかかるうえ、情報の流通した現在では高値を付けることができないため、業者にとってそれほど儲けの大きな車ではないのだ。
利益を出すには、仕入れ価格の安い車をたくさん仕入れ、それを短期間で売りさばく必要がある。仕入れ価格の安い車といえば、その代表が不人気車だ。
車の人気を決定する要素には、おもに車種とボディカラーがある。車自体の品質はそれほど問題ではない。
あなたが売ろうとする車が、たまたま一般的には人気のない車種とボディカラーだった場合、車の性能には問題がなくても高額買取にはなりにくいということだ。
2.事故車・修復歴車
事故車や修復歴車であっても、プロの手で修復されると一般の人には見分けるのが難しい。それと知らずに買ってしまう可能性もあるだろう。
自動車公正取引協議会はそのようなことをなくすために中古車販売店に修復歴の有無を表示することを義務付けている。
「修復歴(車体の骨格に当たる部位の修正及び交換歴)の有無」の表示については、販売する中古自動車に修復歴がある場合に「有」と表示するものとし、修復歴がない場合は「無」と表示するものとする。
しかし、一部の業者のなかには、その義務を守らずに販売しているところもあるようだ。
事故車(修復歴車)とは、車の構造的に重要なフレームやエンジンを修理・交換している車であるから、たとえ外観がきれいでも仕入れ価格は非常に安くなる。
事故車を安い値段で仕入れ、それを隠して通常価格で販売して利益を出そうとする業者もいることに注意しなければならない。
3.冠水車、災害車
自然災害が発生した時に頻発するのが冠水車などの災害車だ。車の部品は水の影響に弱いため、修理しても機械的にはかなり弱くなってしまう。
ただでさえ中古車にはいつ故障するかわからないリスクがあるわけだから、冠水車ともなると走行という車の基本機能に信頼がないため、通常なら買い手はほとんどつかない。
ただ、中古車買取業者のなかにはそうした冠水車などの災害車も積極的に買い取るところがある。なにしろ仕入れ価格が一般的な中古車より段違いに安いため、大きな利益を上げることができるのだ。
修復歴車と違って冠水車には販売時の表示義務がないため、外観さえ整えておけば安く仕入れて高く売るのにもってこいの車なのである。
4.走行距離不明車(メーター改ざん歴がある車)
中古車は走行距離が少ないほど高く売れる。実際は30万kmぐらい走行したところで現在の技術を集めた車なら性能に問題はないのだが、大多数の人は走行距離が10万kmを超えるような車を敬遠しがちだ。
そのため、走行距離が少なければ少ないほどよいというユーザーの価値感につけ込み、一昔前まではメーターを改ざんして走行距離を実際より少なく見せかけて売ろうとする中古車業者も存在していたほどである。
取り締まりが厳しくなり、メーター改ざん歴車にはそれと表示する義務が設けられた現在では、そもそも走行距離不明車を買い取ることを拒否する業者も増えているが、逆に言えばそれだけ安く仕入れることのできる車だということだ。
5.過走行車(1年15,000km以上)
過走行車とは年間の平均走行距離が通常より多い車のことをいう。一般的には年間の走行距離が1万kmを超える車を過走行車と捉えることが多い。
実際、日本自動車査定協会の査定基準においても、年間1万kmが査定にマイナスに作用する目安とされている(初年度登録から7年以上も経った車では年間7~8千kmがマイナス査定のラインだ)。
そのため、年間15000km以上も走行している車には買い手がほとんどつかなくなる。その結果、仕入れ価格がかなり安くなるという仕組みだ。
また、過走行車とは年間の平均走行距離で考えるのがふつうだが、その意味では過走行車でなくても総走行距離が10万kmを超える車もユーザーは敬遠しがちなため、安く仕入れやすい車となっている。
6.年式が古い(モデルチェンジなども含む)
同じ車種の車なら年式が古いほど新車価格からの値落ち幅が大きくなる。やはり車は新しければ新しいほど良いと考える人が圧倒的に多いため、低年式車には買い手が少なくなるのだ。
買い手が少なくなるということは高い価格で販売しても売れないということだから、利益を上げるためには販売価格を安く設定する必要があり、その結果、必然的に仕入れ価格も安くなることになる。
また、単に初年度登録からの年数だけでなく、現行モデルかどうかも中古車価格には大きな影響を与える。
たとえ1~2年しか乗っていない車でも、その間にモデルチェンジがあると、旧モデルの車となり価格が一気に下がるのだ。
7.キズやヘコミが多い
日本人には車の外観にこだわる人が多いため、ボディにキズやヘコミが多い車には人気がない。
もちろん中古車買取業者はある程度のキズやヘコミは修復してから販売するものだし、ボディのキズやヘコミは修復歴には当たらないから、販売価格を下げなければ売れないということはないだろう。
しかし、中古車買取業者にとって、キズやヘコミの多い車はそれを理由に仕入れ価格を抑えるのにもっていこいだ。
実際、中古車を購入する立場に立ってみても、キズやヘコミが多い車には、「前オーナーが乱暴に扱っていた」というイメージを抱くものだから、その心証の悪さを理由にされると買い叩かれても文句を言いにくいものである。
8.内装が汚い、焦げ跡がある、臭いがある車(喫煙車)
内装が汚い、シートにタバコの焦げ跡がある、車内にタバコなどの臭いが染み付いている車というものは、それを購入する立場から考えても誰もが避けたい車だろう。
当然、仕入れを行う中古車買取業者としても、売り物としての価値を考えると是が非でも仕入れるべき車とは言えない。
修復できる部分もあるが染み付いた臭いを完全に除去することは難しいし、そもそもそんな車を売れる状態に仕上げるための手間を考えても通常の価格で仕入れるには値しない。
逆に考えれば、そのような車は極端に仕入れ価格を抑えることのできる車というわけで、販売価格との差を利用して大きな利益を上げることができる車とも言えるのだ。
9.子供がいる形跡がある車
子供がいる形跡がある車とは、簡単に言えばシートなどに汚れがある車のことだ。
子供のいる家庭で使われていた車だからといって、それだけでは車の価値にはもちろん何の影響もない。
小さい子供は車内で飲食する時に食べかすなどをこぼして内装を汚しやすいということから、子供がいる形跡がある車は買取でマイナス査定となりやすいという意味だ。
子供を乗せていたからといってそれだけで買取価格が安くなるわけではない。
しかし、子供を乗せていた影響で内装が極端に汚れている車だと、上記の「内装が汚い、焦げ跡がある、臭いがある車」の項で説明したように、売り物としての価値が減じるため仕入れ価格を安くしやすいというだけのことだ。
安く仕入れて高く売るのが買取業者の基本
仕入れ価格の安い車を高く販売できれば、中古車買取業者にとって利益は大きくなる。
安く仕入れて高く売るということは、中古車業界だけでなく物を売って商売するすべての業種に当てはまることである。
しかし、現在の中古車業界では、情報の流通スピードが上がったこともあり、販売価格を高くするにも限界がある。
誰でもネットで調べるだけで中古車の販売価格相場を知ることができる現在では、相場より販売価格を高く設定すれば誰もその業者で車を買わないことになってしまうからだ。
販売価格の上限が決まっている以上、利益を大きくするには仕入れ価格を抑えるしかない。ただ、仕入れ価格を抑えるといっても状態の良い人気車では無理である。
今では複数業者に相見積もりする人も増えている。そのため、相手が素人だからと思って安い買取価格を提示すると、それより高い金額を提示する業者に車を持って行かれてしまうのだ。
そこで、通常では値段の付きにくいような車、つまり、不人気車、事故車、冠水車、走行距離不明車、過走行車、年式が古い車、キズが多い車などにターゲットを絞り、仕入れ価格を極限まで抑えることによって、利益幅を大きくすることに注力する業者が増えているのである。
中古車市場の店頭表示価格と仕入れ価格の違い
中古車販売店に陳列されている車の値段を見て、「自分の車もこのぐらいの値段で売れるのではないか」と思ったことのある人もいるだろう。
しかし、実際に売却しようとすると、提示される買取金額が店頭表示価格に比べて数十万円も安いということは珍しくない。
店頭表示価格と仕入れ価格の違いを認識しておかないと、思わぬ損をすることもあるし、ベストな売り時を逃してしまうこともあるのである。
中古車買取業者が車を安く仕入れて高く売ろうとしていることは多くの人が理解していることとは思うが、店頭表示価格と仕入れ価格の差に何が含まれているかまで知っていることで、より有利な業者選びが可能になるのだ。
店頭表示価格の内訳
中古車の店頭表示価格とは、仕入れ価格に、販売点の利益と、人件費・広告費・維持費などの管理費、さらに税金や自賠責保険などの費用がプラスされた金額である。
実際の販売では、税金や保険の費用でプラスされる金額は20万円を目安にするとよいだろう。
あくまでも目安であるが、この金額は販売店によって大きな差が生まれない(まれにこれらの費用を水増しする業者もいるので注意が必要だ)。
販売店ごとに店頭表示価格が違っているのは、その販売店が利益と管理費をどのように設定しているかの違いに理由がある。
利益の取り方は販売店ごとに方針が違うものだ。薄利多売が可能なら、販売価格を抑えて利益を少なくしてでも、できるだけ多くの台数を仕入れることに力を入れるだろう。
一方、販路が限られているのでたくさん仕入れられないという販売店なら、1台の利益を大きくするために、仕入れ価格をなるべく抑えようとするものである。
愛車を売却する際に少しでも高く売りたいのであれば、こうした中古車販売店ごとの特色の違いを把握しておかなければならない。
販売店の利益はだいたい「20~25万円」
中古車販売店の利益はだいたい20~25万円を目安にするとよい。仕入れ価格に20~25万円をプラスした金額が店頭表示価格だ。
もちろんこの金額はあくまで目安に過ぎない。20万円以下の値段で販売される中古車も存在するように、もともとの価値が低い中古車では販売店もそこまでの利益は望めない。
ともあれ、中古車販売価格が100万円程度もする車であれば、20~25万円というラインは有効な目安となるだろう。もちろん販売店ごとに利益の取り方には違いがあるため、20万円以下の利益でもやっていける店もある。
いずれにせよ、中古車の仕入れ価格は、このように店頭表示価格よりかなり安い金額なのが中古車業界の常識なのである。このことを知っておくと、中古車査定で必要以上に買い叩かれることを防ぐことができる。
たとえば店頭表示価格が150万円もする車なのに、査定を受けた結果、提示された買取金額が50万円だったら誰しも疑問に思うだろう。
もちろん中古車は1台ごとに状態が異なるため、同じ車の店頭表示価格がいくらだったからといって、そのまま自動的に仕入れ価格を計算できるわけではない。
しかし、あまりに差が大きい時に「買い叩かれているのではないか?」と疑問に思えることが大切なのである。
店頭表示価格に上乗せで税金がかかる
中古車販売店に展示されている車の表示価格は、それだけ支払えばその車を購入できる金額とはなっていない。
一般的に中古車の購入価格は、店頭表示価格に税金や自賠責保険の費用に加え、整備費用など諸経費がプラスされる。
税金と自賠責保険料は法定費用であるため、基本的にはどこの販売店で中古車を購入するとしても同じであるはずだ。
もちろん排気量の大きな車ほど税金にかかる費用も大きくなるのではあるが、税金等で店頭表示価格に上乗せされる金額は20万円を目安にするとよい。
ただ、現在では消費税込みの金額を表示することが自動車公正取引協議会の規定により定められているため、ほとんどの販売店では税込み価格も表示されているはずである。
しかし、車両本体以外の部分にまで税込み価格を表示する義務はないため、ETCやナビなどのオプションの追加料金や名義変更の手数料にかかる消費税は店頭表示価格に含まれていないことが多い。
いずれにせよ、法定費用はどこの販売店でも同じなことが基本であるから、そこで水増しするような業者には注意しなければならない。
足元を見られて安く買い取ろうとする業者も…まずは査定額の相場を知ろう
中古車買取業者は、車を可能な限り安い値段で買い取ることで利益を出している。車を査定に出すとわかるように、なかなかユーザーが納得するような高額買取とはならないものなのだ。
しかし、明らかに買い叩かれていると察した時は、その業者への売却をやめてほかの業者の査定を受け直す方法がある。
それには業者の提示する査定額が適正なものかを判断できる知識が必要だ。つまり、この車種でこのグレード・年式ならいくらぐらいで売れるかという相場を知っておくことが大切なのである。
正確な買取相場を知るには複数の業者に査定してもらって、その結果を比べるとよい。複数の業者に査定を依頼できる一括査定サービスを有効に活用しよう。
まとめ
中古車買取業者が利益を出すには、中古車をなるべく安く仕入れる必要がある。情報が行き渡った現在では、儲けを大きくしようと高い値段設定で販売しても売れないからだ。
販売価格に上限がある以上、利益を出すには必然的に仕入れ価格を抑えなければならない。したがって、中古車査定では販売価格よりはるかに安い買取価格を提示されることが多いのだが、ニーズの高い人気車ではそれにも限界がある。
そこで、業者のなかには仕入れ価格を抑えやすい車を狙って仕入れに力を入れているところもある。先ほども解説したが、
- 車種やボディカラーなどで不人気の車
- 事故を起こして修復歴のある車
- 災害などによる冠水車
- 走行距離が不明な車
- 低年式車
- 過走行車
- キズやヘコミ・内装の汚れなど難がある車
こうした車は、売り手も安くてもいいから手放したいと考えるため、業者にとっては仕入れ価格を節約できるおいしい車である。
整備してある程度状態を整えれば、高く売れないにしてもある程度の売れ行きが確保できるため、業者にとっては利益が出しやすいのだ。
ただし、売り手もその事情を心得ておかないと、必要以上に安く買い叩かれてしまう危険性がある。それを防ぎ、適正な価格で売却するには、中古車の査定額の相場を知ることが先決だ。